2010年8月12日木曜日

なぜヒトはエイリアンに誘拐されたと思い込むのか。

”なぜヒトはエイリアンに誘拐されたと思い込むのか。” という書籍を読んだ。早川書房、スーザンAクライシー著。2005年

「UFOを見た。宇宙人に会った。エイリアンに誘拐された、そして人体実験された。」。そう主張して譲らない人々が全米に何万人もいるそうだ。アブダクター(誘拐者)と言うらしい。著者はそう言った人に会い、話を聞き、質問、分析し、そこに何があったかを調査した。間違えないで欲しい、著者はUFOや、エイリアンの有無、見た物の真偽を調べたのではない。そう主張する人々の心理や思考経路を調査したものである。著書は心理学を学んだ大学のマスターなのだ。

”UFO”が見られるようになったのはいつ頃からか。そう主張する人々が最初に現れたのはいつ頃で、どのようにして増えたのか。最初に何があって、それは時間、時代と共にどう移り変わって行っているか。そこに見られる現象、事象は何だろうか。著者はそれらのグループとコンタクトを取り、聞き取り調査をしていく。

”信じる”ということは、かなり容易なこと。ヒトは簡単に物事を信じて、それが事実であろうと無かろうと、自分の生い立ちにないものでも、ちょっとしたきっかけで信じてしまう、思い出の軌跡に組み入れられてしまうのだ。

ある時代、生まれ変わりや、多重人格、幼児期の虐待に関わる問題の解決に、催眠術が頻繁に用いられた事があった。催眠術は被験者の意識のそこに隠れ潜む事実を呼び起こし、抑圧され曲げられていた真実を表に現すものだ、と考えられた。しかし現在の精神医学はそれが間違いだったとなっている。催眠術で呼び起こされたおどろおどろしい幼児体験や、忘れ去られていた不幸な出来事の多くが、実際は催眠術者による作り話しで、被験者はそれをいとも簡単に事実と認めてしまう、と言うカラクリだった。医者の言う”かもしれない”は、容易に"そのとうり”となってしまう。実体験でもない出来事を、過去にあったかのように教え込むのは、とても容易なことだと判った。数分前まで根も葉もない事柄が、突如疑うべくもない真実の記憶になるのだ。

話を戻そう。UFOを見た。宇宙人に会った、という話しは昔はなかった。それは話題が宇宙に目を向け始めてから、SFドラマで紹介されてから、テレビの特集が放映されてから突如に増えている。それが引き金になったのかも知れない。しかし、彼らの話、多くの人々の間で宇宙人の姿やUFOの形は驚くほど似ている。一方、放映されなかった部分の供述はそれぞれが全く違っていてあいまいで、あやふやだ。

ヒトが体験した事実、歴史、幼児体験は、それが本当かどうかは誰にもわからない。その人がそうだった、それを体験した、記憶に残っている、と言えばそれはその人にとってまぎれもない事実だ。そんな馬鹿なことはない、ということを証明したって証明した本人にとっては解明されても、第三者にとっては何の解明にもならない。実際に感じたかどうか、がそれを決める。見た者には事実で、信じない者にとっては虚実である。宗教も経済も、アイドルも科学もそれは同じ事なのだ。

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