2008年9月2日火曜日

福岡慎一郎 生物と無生物との間

 感想文かな?
 書籍 「福岡慎一郎 生物と無生物との間」 
ここには、生物の巧みな仕組み、数億年の進化の智慧が感じられる。この書物の結末を記してしまおう。それでも、この本はおもしろい。
 主人公は、消化液分泌機能を司る遺伝子を突き止めるために、その遺伝子の発現を抑制した実験用マウスを作ることになる。遺伝子は1匹の生き物を形作る全ての細胞に、同じ物が存在する。傷ついた物は修復されるか破棄される。体内の細胞はきちんと管理されている。全くおなじ遺伝子がその細胞の置かれた場所によって、発現したり、沈黙したりする。 試験体を作り、論文を書くためのデータを集めようとする時、1匹の生き物の全ての細胞からその機能を取り去らねばならない。また、それ以外の全ての機能について完璧に整っていなければならない。その遺伝子の削除によって、その機能のみが消えることを証明する、それが目的だ。
 そのためにはまず、その機能をもたない胚を作り、そこから1匹のマウスを成長させなければならない。そうやって全ての細胞にその遺伝子を持たないマウスが得られる。ちなみに、そうやってつくられた実験用マウスのことを、”ノックダウンマウス”という。

 結末である。”ノックダウンマス”は得られた、しかし、その遺伝子を持たないマウスは、何ら異常も見せず成長した。確かにその遺伝子は細胞内に見あたらない、発現していない。しかし、その個体は正常で、分泌にもなんら問題はない。
 感動の結末は以下である。つまり、生物の発生段階でその形質が有る、無いというスイッチ以外に、それをチェックし、迂回するシステムをもつということ。その代替機能、迂回方法を持ってているのだ。
 発生の始まったある段階で特定の遺伝子が働かないと、別の代替する機能が発現しそれを補足する。その障害が発現するのは、その遺伝子が有るけれど機能しない時、ある時期が過ぎてからその遺伝子が機能しなくなる、また、発生段階では正常でその後に損傷を受けると、障害が発現すると言うような仕組みらしい。 著者の行為は、この試験に当たってほぼ間違いないと突き止め確信した物を、確認するためだった。そして結末は、生き物のもつ巧みな仕組みだった。数億年に育まれた生物は、それほど安直なシステムではないのだ。
 そのことに、著者、そして読者は感嘆し、巷にあふれる命の中に神を見いだすのだ。

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